- 固定資産の購入時の仕訳がわからない・・・
- 減価償却の計算が苦手だ・・・
- 固定資産を売却するときの仕訳が難しい・・・
簿記3級の仕訳の中でも、固定資産の仕訳は結構ややこしいと思う方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、固定資産と一口にいっても「購入時の仕訳・減価償却・売却・修繕」など、色々な角度での問題が出題されます。
しかも、固定資産の問題は本試験でも必ず出題されると言っても過言ではない重要な論点ですので、固定資産の仕訳を苦手のままにしておくのは危険です。
そこでこの記事では、簿記3級の固定資産の仕訳のコツをご紹介します。
簿記3級の固定資産の仕訳は、コツを掴んでしまえばそこまで難しい内容ではありませんので、安心してくださいね。
キノ
〜この記事でわかること〜
【簿記3級】固定資産の仕訳①購入
固定資産の仕訳1つ目は、固定資産の購入の仕訳です。固定資産の購入の仕訳のコツは下記の通りです。
- 後払い時の勘定科目
- 付随費用の会計処理
それぞれ詳しく解説をしていきます。
固定資産とは、機械装置、建物、土地、備品、車両などの長期にわたって使用する資産のことです。簿記3級だと、建物、車両などがよく登場するイメージがあります。
後払い時の勘定科目
固定資産を購入する際に、「代金を後払いにする」という仕訳問題がよく出題されます。
後払いにすると言うことは、例えば商品売買の場合は、「仕入100 買掛金100」のような仕訳になりますが、固定資産の取得の場合は「買掛金」勘定を使いません。
では、なんの勘定科目を使うのかと言うと、「未払金」勘定を使用します。
それでは、簡単な仕訳問題を解いてみてください。
車両100,000 未払金100,000
「未払金と買掛金」この2つの使い分けは、主たる営業取引かどうかで判断をします。
例えば、主に営業でゲーム機を売っている「A社」の場合は、主たる営業取引はゲームです。車の売買を行っている「B社」では、主たる営業取引は車の売買です。
A社が車両を購入した場合、主たる営業取引はゲーム機なので車の購入は「営業外の取引」なので「未払金」
B社が車両を購入した場合、主たる営業取引は車の売買なので車を仕入れたと考えて「買掛金」と考えます。
これは2級の内容なので詳しくは割愛しますが、上記の内容をなんとなく頭に入れておくことで、固定資産の仕訳を間違えにくくなります。
付随費用の会計処理
固定資産を購入する時に、付随費用が発生する問題が出題されることがあります。
付随費用とは、固定資産を購入する時にかかる費用のことで、この費用をどのように会計処理するのかを問われます。
付随費用は基本的に「固定資産+付随費用」で計算して仕訳を行います。
ですので、問題文に費用がかかる旨の記載があっても費用勘定を使用せず、固定資産に含めて仕訳を行いましょう。
例えば、100,000円の車を購入して手数料として2,000円を現金で支払ったとします。
この場合、下記のような仕訳になります。
- 車両100,000 未払金100,000
- 現金2,000
固定資産の取得時に、本体価格+付随費用で計算をしますが、その金額のことを取得原価と呼びます。
「取得原価=購入代価+付随費用」となります。
なぜ、購入代価+付随費用なのかというと、付随費用は固定資産を購入した際に支払う費用だからです。
費用は、P/L科目なので1年単位で集計するものですよね。
ただ、固定資産は1年以上の長い期間で使用して収益を生み出すものなので、付随費用も使用する各年度ごとに分割して表示した方が適切だと思いませんか?
ただ、実際に費用としてお金が発生したのは購入時なので、各年度ごとに費用計上することができません。
そこで、各年度ごとに付随費用を負担させるために、固定資産に付随費用を含めて取得原価とします。
そうすることで、実際に固定資産を使用する各年度ごとに付随費用分を負担させることができるのです。
【簿記3級】固定資産の仕訳②減価償却
固定資産の減価償却の仕訳は慣れないうちは難しく感じるかもしれません。
そこで、順を追って解説をしていきたいと思います。
- 言葉の定義
- 減価償却の計算
- 減価償却の仕訳
- 減価償却の仕訳応用編
それぞれ解説します。
1:言葉の定義
まずは減価償却の言葉の定義を確認しておきます。
- 減価償却:固定資産の取得原価を劣化により費用にしていくこと(仕訳の勘定科目ではありません)
- 減価償却費:減価償却を費用として計上するもの(費とついているので(借方))
- 減価償却累計額:今までの減価償却費の合計金額(費用をまとめたもので資産のマイナス科目(貸方))
- 耐用年数:固定資産の寿命
- 残存価額:最終的に残る固定資産の金額(最低額)
- 定額法:減価償却の計算方法(3級はこの計算方法のみ)
- 間接法:減価償却累計額を使う仕訳方法
- 直接法:減価償却累計額を使わない仕訳方法
上記のように、固定資産の減価償却の仕訳は覚えることがたくさんあり、面食らってしまうかもしれません。
しかし、慣れてしまえばそこまで難しいこともないので1つずつ確認していきましょう。
2:減価償却の計算
簿記3級の減価償却の計算方法は、定額法だけなので下記の式を暗記してください。
キノ
定額法の計算は、毎期期末に定額で減価償却費を計算する方法なので、全体の償却する金額(取得原価ー残存価額の部分)から償却期間を割ることで計算できます。
残存価額が0円の場合なら、「取得原価÷耐用年数=減価償却費」となります。
3:減価償却の仕訳
減価償却費が計算できたら仕訳を行います。
減価償却の仕訳は、減価償却費と減価償却累計額を用いて仕訳を行います。ここで注意が必要なのは、「減価償却累計額」で、これは評価勘定という資産のマイナス科目です。
キノ
減価償却累計額のホームポジションは貸方なので注意してください。
それでは、簡単な仕訳問題を解いてみてください。
〜資料〜
- 車両100,000円
- 残存価額10%
- 耐用年数5年
- 間接法
- 定額法
減価償却費18,000 減価償却累計額18,000
★解き方
- 定額法と書いてあるので定額法の計算式を書きます
- 定額法:(取得原価ー残存価額)÷耐用年数=減価償却費の式に当てはめる
(取得原価100,000ー残存価額10,000(100,000×10%))÷5=18,000 - 間接法と書いてあるので、「減価償却累計額」を使って仕訳をすることがわかります
- 使う勘定科目:減価償却費、減価償却累計額
- 減価償却費は費用なので借方に18,000
- 減価償却累計額は資産のマイナス科目なので、資産のホームポジションと反対側の貸方に18,000
4:減価償却の仕訳応用編
先ほどまでの例では、期首に固定資産を購入して期末に1年間分の減価償却を計算をしてきました。実際の試験では、期の途中で購入して期末に減価償却をするという問題も出題されます。
上記の図のように、期の途中で購入した固定資産は、購入月から月割で計算することになります。
例えば、7月1日に購入して3月31日が決算日だとしたら、「7月1日〜7月31日で1ヶ月」と数えていき、3月31日で合計9ヶ月です。
よって、当期の減価償却費は「(取得原価ー残存価額)÷耐用年数=減価償却費×9ヶ月÷12ヶ月」と計算します。
9ヶ月分の減価償却費を出すのなら、先に12で割って9を掛ける方がわかりやすいという方も多いと思います。
しかし、その計算方法で計算をすると割り切れずに小数点になってしまうことが多いです。
ですので、先に目標の月数をかけて、その後で12ヶ月で割るように計算しましょう。
例:
- 減価償却費:17,000円
- 購入月:7月1日
- 決算日:3月31日
- 対象月数:9ヶ月
NG➡︎17,000÷12=1,416.6666・・・×9=12,749.9999・・・
OK➡︎17,000×9=153,000÷12=12,750円
【簿記3級】固定資産の仕訳③売却
続いて売却時の仕訳です。個人的に一番苦戦したのが売却時の仕訳でした・・・
覚えてしまえばたいした仕訳ではないので、ここで一緒に覚えてしまいましょう。先に売却時の仕訳の一例を見てみましょう。
減価償却累計額54,000 車両100,000
減価償却費9,000
現金30,000
固定資産売却損7,000
キノ
固定資産売却損とは、固定資産を売却した際に出る損失のことです。
例えば、1,000円で購入した固定資産を700円で売却した場合は300円の損となります。
1,000円で購入した固定資産で600円分の減価償却をしていた場合、固定資産の価値は400円。その固定資産を700円で売却した場合は、「700ー400=300」となり、300円の利益と考えます。
利益が出た場合は、固定資産売却益という勘定科目を使用します。
減価償却累計額のホームポジションは貸方で、それがなくなるので借方に書く
売却する前に発生する減価償却費なので、借方に記載することになる
ややこしい仕訳ですので、1つ1つ丁寧に勘定科目を記入していきましょう。腹落ちするまで何度も同じ問題と解いてみるのもおすすめですよ!
【簿記3級】固定資産の仕訳④修繕
最後に修繕費について解説をします。修繕費とは、固定資産を修繕する際に発生する費用のことです。
費用なのでそのまま費用勘定である「「修繕費」勘定で仕訳をすればいいじゃん!」って考えてしまいそうですが、実は注意しなければならないポイントがあります。それが下記の表の通りです。
収益的支出の場合:修繕費で仕訳をする
資本的支出の場合:取得原価にプラスする
どういうことか解説をします。
収益的支出の場合:修繕費で仕訳をする
収益的支出というのは、物件の修理や現状維持かかった費用のことです。
例えば、物件の修理や現状維持の工事をしたとします。
それはあくまで、修理・現状維持の工事であり、物件の価値そのものが上がるわけではないので「修繕費」を使用して仕訳を行います。
それでは、簡単な仕訳問題を解いてみてください。
この工事は、建物の修理を目的としている(収益的支出)
〜資料〜
- 建物100,000円
- 残存価額0円
- 耐用年数10年
- 間接法
- 定額法
修繕費20,000 現金20,000
★解き方
- 収益的支出と書いてあるので、修繕費で仕訳をする
- 使う勘定科目:修繕費、現金
- 修繕費は費用なので借方に20,000
- 現金は資産で、現金が減るので貸方に20,000
資本的支出の場合:取得原価にプラスする
資本的支出とは、物件の価値が高まる修理や改良などに使った費用のことです。
収益的支出との違いは、物件の価値が高まるという部分です。
物件の価値が高まるため、物件の取得原価に直接プラスする会計処理をすることになります。
それでは、簡単な仕訳問題を解いてみてください。
この工事は、建物の価値を高める支出である(資本的支出)
〜資料〜
- 建物100,000円
- 残存価額0円
- 耐用年数10年
- 間接法
- 定額法
建物20,000 現金20,000
★解き方
- 資本的支出と書いてあるので、建物の取得原価に加える仕訳をする
- 使う勘定科目:建物、現金
- 建物は資産なので借方に20,000
- 現金は資産で、現金が減るので貸方に20,000
まとめ
今回は、簿記3級の固定資産の仕訳の解説をしました。
固定資産の仕訳は、『購入・減価償却・売却・修繕』とたくさん覚えることがあり、結構大変な論点です。
特に、売却の仕訳は使用する勘定科目も多く、間違えやすいので注意が必要ですので、1つ1つ注意しながら仕訳を行うようにしましょう。
また、固定資産で登場する言葉の定義はしっかりと押さえておくと、今後の勉強にも役立ちますよ。
キノ
簿記3級に続き、簿記2級の勉強も視野に入れている方が多いと思います。
簿記3級は独学でも取得できますが、簿記2級の独学は結構大変です。
効率良く簿記2級まで取得したい方にはスタディングという通信講座がおすすめです!
簿記3級・2級セットなら一括『21,800円』でテキスト・動画教材・問題集・検定対策模試・Q&Aチケット5枚など、簿記2級学習に必要な教材が手に入ります!
「テキストを読むだけでは限界がある・・・」
という方は、検討してみてはいかがでしょうか?