- 直接原価計算が苦手・・・
- 直接原価計算と全部原価計算の違いは?
- 固定費調整が覚えられない・・・
この記事では、このような声にお応えして「直接原価計算」の基本的な部分について解説していきます。
簿記2級から登場する工業簿記ですが、『費目別→部門別→個別原価計算→総合原価計算→標準原価計算』と勉強してきたと思います。
感の良い方なら気づいたかもしれませんが、直接原価計算は今まで勉強していきた原価計算とは性質が異なります。
なので、今まで勉強していきた原価計算と同じだと思って臨むと、頭が混乱してしまうかもしれません。
個別・総合原価計算は企業外部向けの原価計算なのに対して、直接原価計算は企業内部向けの原価計算なのです。
この記事では、そのあたりの違いを可能な限り触れながら解説していきますので最後までご覧ください。
キノ
〜この記事でわかること〜
直接原価計算とは?全部原価計算との違いは?
直接原価計算と全部原価計算の違いは下記の通りです。
直接原価計算:企業内部向け
全部原価計算:企業外部向け
直接原価計算:「変動費」と「固定費」に分ける
全部原価計算:変動費と固定費を一緒に計算する
簿記2級で勉強してきた個別・総合原価計算が全部原価計算で行ってきた問題の解き方です。
財務会計と管理会計
簿記1級の内容かもしれませんが、少しだけ触れておきます。
会計には、財務会計と管理会計の2つがあります。ざっくり解説すると下記の通りです。
- 財務会計:企業外部用の財務諸表を作成する
- 管理会計:企業内部用の資料を作成する
個別原価計算や総合原価計算は財務会計で、企業外部の株主や銀行など世間一般に公表する財務諸表を作成するための会計です。
キノ
管理会計は、企業の内部向けの原価計算です。
社長が会社の利益をアップさせるために必要な意思決定ができるように、原価の計算をすることが目的です。
キノ
簿記2級レベルであればこれくらい知っていれば大丈夫だと思います!
直接原価計算のポイント①変動費と固定費
全部原価計算では、費目別で原価を計算しましたが、直接原価計算では直接費と固定費で計算します。
計算方法は総合原価計算とほとんど同じでようなものですが、全部原価計算と直接原価計算では固定費の扱い方が異なります。
- 全部原価計算:当期の固定費は期末仕掛品・製品(製造原価)に含まれる
- 直接原価計算:当期の固定費は全て販売費及び一般管理費(期間原価)になる
例えば、減価償却費がわかりやすいです。
費目別計算では減価償却費は間接経費で、総合原価計算では加工費に含まれますよね。
なので、期首仕掛品には前期の減価償却費が含まれ、期末仕掛品には当期の減価償却費が含まれています。
直接原価計算では、減価償却費は固定費に含まれるでしょう。(定額法で減価償却していたら、毎年同額の費用がかかるからです)
なので、減価償却費は仕掛品や製品に含まれません。
全て、当期の期間費用として計上されます。
変動費:作るだけ費用がかかるもの(材料費など)
固定費:製品の製造量に関わらず一定の費用がかかるもの(減価償却費など)
直接原価計算のポイント②固変分解
全部原価計算と直接原価計算の違いは、固定費の扱い方です。
直接原価計算では、原価を変動費と固定費に分ける必要があるのですが、
「何を固定費とするのか?」
という問題があります。
実務上で変動費と固定費に分けるのが困難らしく、固変分解という方法を使って変動費と固定費に分けるそうです。
簿記2級で出題される固変分解は『高低点法』です。
簿記2級を独学で合格するのは結構大変です。
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下記の記事では、簿記2級初学者の方〜勉強中の方にまでおすすめできる通信講座をご紹介していますので、参考にしてみてくださいね。
高低点法の計算方法
高低点法は本試験で出題頻度が低いようですので、余裕のある方だけ勉強する感じでもいいかもしれません。
キノ
高低点法は、正常な範囲の中で一番高い月と一番低い月のデータを使って変動費と固定費にわけます。
キノ
高低点法は、その正常な範囲の中で一番高い月と一番低い月の変動費単価を求めて、変動費と固定費に分解します。
高い月と低い月の比較から、月単位でどれだけ変動したのかを計算して変動費を計算すると考えると良いかもしれません。
⚫︎一番高いデータ:
生産量 :800個
発生原価:100,000円
⚫︎一番低いデータ:
生産量 :600個
発生原価:80,000円
上記のデータから、変動費を計算します。
<変動費の求め方>
発生額:100,000ー80,000=20,000円
生産量:800-600=200個
変動費単価:20,000÷200=@100円
<固定費の求め方>
変動費:@100円×800個=80,000
固定費:100,000ー80,000=20,000
※800個:一番高い月の生産量
※100,000円:一番高い月の製造原価
※低い方のデータを使っても同じ結果になります。
直接原価計算のポイント③固定費調整
固定費調整とは、直接原価計算の営業利益を全部原価計算の利業利益に修正する会計処理のことです。
財務会計は、社外の人に報告するための会計処理をしますが、管理会計は企業内部向けの資料を作ることを目的としています。
直接原価計算は企業内部資料用なので、そのままでは財務諸表として使うことができません。
社外向けにあらためて資料を作り直すこともできますが、せっかく直接原価計算で作成した資料があるのであれば活用していきたいですよね。
そこで、直接原価計算で計算した営業利益を調整して、全部原価計算の営業利益になるような会計処理を行います。
直接原価計算と全部原価計算の違いは、「固定費を製造原価」としているか「固定費を期間原価」として全額費用としているかの違いです。
この違いを修正することで、わざわざ全部原価計算をやり直す必要がなくなります。
固定費調整は期末を足して期首を引く!
固定費調整は、下記の公式で求めることが可能です。
【直接原価計算の営業利益+「期末仕掛品・製品」ー「期首仕掛品・製品」の固定費】
このまま暗記をしても問題ありませんが、試験中に、
「あれ?期末と期首どっちを足して、どっちを引けばいいんだっけ?」
とド忘れしてしまうかもしれません。
なので、できる限り「なぜ?」の部分を押さえておきましょう!
直接原価計算は、固定費を期間原価にして全額当期の費用とするので、仕掛品や製品には含まれていません。
全部原価計算は、製造固定費は仕掛品や製品にも含まれています。
キノ
もう一度固定費調整の式を確認しておきましょう。
【直接原価計算の営業利益+「期末仕掛品・製品」ー「期首仕掛品・製品」の固定費】
「なぜ、このような式になるのでしょうか?」
直接原価計算は、当期発生の固定費全てを費用として計上します。
一方、全部原価計算は、当期発生の固定費は期末仕掛品と完成品に按分され、売れた製品に含まれている固定費は売上原価(費用)となります。
(期首仕掛品・製品がある場合も売上原価になります。)
要するに、固定費の一部が期末棚卸資産になるためP/L(費用)にならず(B/S)に計上されます。
キノ
ここは大事なのでしっかりと把握しておいてください。
全部原価計算の営業利益の式
全部原価計算の営業利益の式を考えてみましょう。
キノ
式にすると下記の通りです。
【売上高ー期首固定費ー当期固定費+期末固定費=営業利益】
- 1:売上高 1,000
- 2:売上原価
・初月製品棚卸高 100
・当月製品製造原価 500 - 合計: 600
- 3:月末製品棚卸高 200
- 売上総利益 600
※固定費だけにフォーカスしていますので、変動費は無視した計算だと考えてください。
『1,000ー100ー500+200=600』となり、上記の式が成り立ちます。
期首と当期発生の固定費は売上原価になり、売れ残った製品に含まれている固定費は費用ではないので費用からマイナスします。
直接原価計算の営業利益の式
直接原価計算の営業利益の式も載せておきます。
製造固定費だけにフォーカスしていると考えてください。
【売上高ー当期固定費=営業利益】
固定費調整は、直接原価計算の営業利益を全部原価計算の営業利益に調整することが目的なので、直接原価計算の営業利益の式を全部原価計算の営業利益の式と同じにすれば良いです。
直接原価計算の営業利益を全部原価計算の式に調整すると下記のようになります。
【売上高ー当期固定費=営業利益(直接)+期末固定費ー期首固定費】
最後にもう一度テキストなどに書いてある固定費調整の式を確認してみましょう。
【直接原価計算の営業利益+「期末仕掛品・製品」ー「期首仕掛品・製品」の固定費】
同じになりましたね。
このように、直接原価計算は、固定費を全額当期の費用にして、全部原価計算は売れた分だけ売上原価となり、売れ残った分は資産になるため、営業利益に差が出ます。
このことを覚えておくと、試験で式を忘れてしまっても自力で解くことができるでしょう。
- 直接原価計算の固定費は、全て販管費になる
- 全部原価計算の固定費は、売れ分が費用になり売れ残った分は棚卸資産に含まれる(B/S)
- 全部原価計算:期首仕掛品・製品に含まれる固定費が費用になる(期首固定費+当期固定費ー期末固定費)
- 直接原価計算:期末仕掛品・製品に含まれる固定費が費用になる(当期固定費)
- 固定費調整は、直接原価計算の営業利益を全部原価計算の営業利益に調整すること
まとめ
この記事では、直接原価計算の押さえておきたい基本的な部分を解説してきました。
直接原価計算は、今まで学習してきた個別原価計算や総合原価計算とは似ているようで方向性が異なります。
個別原価計算や総合原価計算は財務諸表作成目的なのに対して、直接原価計算は企業内部用の原価計算です。
直接原価計算で特に忘れやすいのが固定費調整です。
直接原価計算は企業内部用の原価計算のため、直接原価計算で計算した営業利益を損益計算書に表記することができません。
そこで、固定費調整をして全部原価計算の営業利益と同じになるように調整することで、損益計算書に表記することができるようになります。
計算自体はそこまで難しいわけではありませんので、基本的な部分をしっかりと把握しておくようすると良いですよ。
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