簿記2級の工業簿記を苦手としている人の中には、「製造間接費の予定配賦が苦手」という方も多いのではないでしょうか?
個人的に製造間接費は、工業簿記の中でもかなりややこしい論点なのではないかと思っています。
特に、「実際原価計算」と「標準原価計算」の2つを明確に区別できる必要があります。
キノ
工業簿記が苦手な方の中には、製造間接費の予定配賦を
「予定単価と予定数量で掛け算すればいいんだっけ?」
と迷ったことがある方も多いのではないでしょうか?
この記事では、自分が簿記2級の勉強をしていた時に苦労したことを思い出しながら、
備忘録的な意味で「製造間接費の予定配賦」について書いていきます。
簿記2級の「工業簿記が苦手・・・」という方は参考になる部分もあると思いますので、最後までご覧ください。
キノ
独学で勉強される方、ぜひご覧ください!
キノ
〜この記事でわかること〜
製造間接費とは?
製造間接費とは、「間接材料費・間接労務費・間接経費」をまとめたもののことです。
例えば、A製品に苺を3つ使ったなど、明確に原価を集計できる材料は「直接」材料費です。
電気代など、A製品に〇〇円使ったと明確に原価を集計できない原価のことを「間接」費と言います。
キノ
製造間接費は最終的に〇〇に振り替える
「間接材料費・間接労務費・間接経費」を製造間接費勘定に集計した後に、仕掛品勘定に振り替えます。
一連の流れを仕訳にすると下記の通りです。
製造間接費100/材料100
製造間接費は費用なので、ホームポジションは「借方」です。
材料は資産で、材料を消費して製造間接費に振替えるので「貸方」です。
仕掛品100/製造間接費100
製造間接費を仕掛品に振替えるので「貸方」です。
仕掛品は資産でホームポジションは左側です。
製造間接費を各製品(仕掛品)に振替えることを配賦と言います。
このあたりは、お持ちのテキストでしっかりと確認しておいてください。
上の画像(勘定連絡図)は、部門別計算をスキップした時の連絡図です。
部門別計算を実施する際は直接仕掛品に振り替えず、各部門に振り替えます。
製造間接費の基礎「予定配賦」とは?
工業簿記は、実際の原価を下記のような流れで最終的に製品1つあたりの原価を計算していきます。
【材料費、労務費、経費→仕掛品→製品】
工業簿記では、基本的に月毎に原価を集計していくのですが、実際原価を算出するのには時間がかかります。
そこで、製造間接費の予定配賦率を使用して予定配賦額を計算して原価計算に用います。
キノ
製造間接費の予定配賦の計算方法!
製造間接費の予定配賦はとても簡単なのでここで覚えてしまいましょう。
製造間接費の予定配賦の計算式は下記の通りです。
※簿記2級の問題では、実際配賦基準は「直接作業時間」を使うことが多いです。
キノ
予定配賦額を計算するには、予定配賦率を計算する必要があります。
予定配賦率の計算は下記の通りです。
材料費の予定価格法と同様、予定配賦率に掛けるのは「実際」配賦基準であることに注意しましょう。
特に、標準原価計算とごっちゃになっていると、計算を間違えるので注意してください。
キノ
予定価格法ってなんだっけ?という方は、下記の記事も参考にしてください。
製造間接費を予定配賦すると差異が発生する!
製造間接費を予定配賦する場合、実際にかかった原価との差異を計算する必要があります。
予定配賦額と実際発生額の差異のことを『製造間接費配賦差異』と言います。
計算方法は下記の通りです。
費用系の差異は【予定ー実際】で計算します。
例えば、『100(予定配賦額)ー200(実際発生額)=▲100(製造間接費配賦差異)』と仮定します。
予定では100円だったのに、実際には200円も多くかかり、100円も多くの費用がかかったので悲しいですよね。
なので、『▲100=不利差異(借方差異)』と考えます。
キノ
工業簿記をあいまい勉強しないための秘訣は?
簿記2級に合格するための鍵は、「工業簿記で40点を獲得」「商業簿記で部分点を取る」ことです。
多くの人が工業簿記では計算問題に焦点を当てがちですが、それだけでは十分ではありません。
実際、工業簿記の問題を解くだけでは、一定の段階で得点が伸び悩みます。
工業簿記では問題を解くだけでなく、1つ1つの用語や概念をしっかり理解することも重要です。
キノ
正直、テキストを読みながら「どこが重要なのか」を独学で把握していくのは大変です。
例えば、材料と材料費の違いを説明できますか?
- 材料とはストックしてあるもの=資産
- 材料費は「材料を消費」したもの=費用
費目別計算の問題が出題された際に、材料と材料費の定義を理解していないと問題を解くことができません。
独学でテキストを読んでいるだけだと、一見地味だけど重要なポイントを見逃したり・そもそも重要だと気づかなかったりして、曖昧な勉強になりがちです。
工業簿記を簿記2級試験の武器にするには、通信講座を活用して勉強することをおすすめします。
通信講座では、動画講義でポイントを解説し、質問にも対応してくれます。
また、実践的な問題演習や模擬試験なども提供され、自己学習だけでは不足しがちな点を補うことができます。
キノ
製造間接費の年間予算を公式法変動予算で設定している場合の差異分析
製造間接費を変動費と固定費に分けて設定している場合があります。
製造間接費を変動費と固定費に分けて設定することです。
公式法変動予算を用いている場合、2つの差異が発生します。
公式法変動予算で発生する差異は下記の通りです。
- 予算差異
- 操業度差異
標準原価計算をすでに勉強している方ならわかると思いますが、シュラッター図という図を使って計算すると覚えやすいです。
この図から読み取れる個人的な覚え方を記載しておきます。
- 予算差異:変動費から生じる差異
- 操業度差異:固定費から生じる差異
予算差異の計算
予算差異は、【予算許容額ー実際発生額】で計算します。
予算許容額は【実際の変動費(変動費率×実際操業度)+固定費】で計算します。
※実際発生額は問題文の中に提示されると思います。
予算差異は、予算として見積もっていた金額と実際発生額の差額です。
固定費は一律で固定なので、変動費が関わってくる差異と考えると覚えやすいと思います。
キノ
操業度差異の計算
操業度差異は、【(実際操業度ー基準操業度)×固定費率】で計算します。
上記のように、操業度差異は固定費の差異といえます。
もう少し詳しく書くと、予算を組む時に想定していた操業と実際の操業のズレにより発生する差異です。
キノ
固定費の差異と書きましたが、固定費には減価償却費や機械を動かすための光熱費などが多く含まれています。
特に減価償却費がわかりやすいですが、機械を使っても使わなくても一定額の減価償却費がかかります。
なので、作った分だけ製品が売れるのであれば、たくさん機械を使った方がお得ですよね。
例えば、1ヶ月に240時間機械を使うと予定していたのに、実際には200時間しか稼働しなかったとなれば、40時間分時間を持て余らせてしまったと言えます。
40時間分も機械を使えるはずだったのに、使わなかったのだからマイナスです。
機械は使っても使わなくても固定で費用がかかるので、40時間分の不利差異が生じるということになります。
製造間接費の予定配賦がややこしい理由とは?
個人的な意見ですが、製造間接費の予定配賦がややこしい理由は「標準原価計算」とごっちゃになることです。
キノ
標準原価でも主に2点においてごちゃごちゃしがちです。
- 実際原価計算と標準原価計算の違い
- 製造間接費配賦差異と標準原価計算の配賦差異の違い
1:実際原価計算と標準原価計算の違い
実際原価計算と標準原価計算の違いをざっくりとで良いので言葉の違いを覚えておきましょう。
標準原価計算では、原価標準(直接材料費・直接労務費・製造間接費)の目標を決めて、標準消費量を掛けて計算します。
今回の題材である製造間接費の予定配賦は、実際原価計算です。
実際単価と実際消費量を掛けて計算します。
原価計算制度上では、実際原価計算は【予定単価×実際消費量】で行うことが認められています。(差異を計算して帳尻合わせもしていますよね。)
今回ご紹介している製造間接費の予定配賦は実際原価計算なので、予定配賦率×実際配賦基準で計算を行います。
逆に標準原価計算の場合は、シングル・プラン/パーシャルプランで計算方法が異なりますので、お持ちのテキストを確認してみてくださいね。
2:製造間接費配賦差異と標準原価計算の配賦差異の違い
製造間接費を予定配賦する場合は、製造間接費配賦差異が発生するとお伝えしました。
公式法変動予算を使用している場合は、「予算差異と操業度差異」の2つが発生するのでした。
キノ
標準原価計算で使用する差異はさらに1つ増えて下記の通りです。
- 予算差異
- 操業度差異
- 能率差異
能率差異が発生する問題であれば、標準原価計算の問題であると認識して問題に取り組む必要があります。
逆に、実際原価計算の製造間接費配賦差異を聞かれている時に能率差異は計算できないので、
「今何を聞かれているのか?」
をしっかりと把握しながら問題を解いていきましょう。
キノ
例えば、シュラッター図で「ひじき」と覚えている方の場合。
製造間接費の原価差異を求める問題で、
「標準操業度ってどこに書いてあるの?」
と無駄に探してしまいます。
もし、問題文から実際原価計算だとすぐに分かれば、
「実際原価計算だから、標準操業度は不要だ!」
とすぐに判断できるようになります。
まとめ
この記事では、製造間接費の予定配賦に関して解説しました。
製造間接費は個人的にかなりややこしい論点だと思っています。
製造間接費の予定配賦や部門別計算、標準原価計算など、いろいろなところで登場するので頭の中がこんがらがってしまいますよね。
工業簿記は、言葉の定義をしっかりと把握して、
「今何を問われているのか?」
を明確にする必要があります。
簿記2級で出題される問題では、資料に定時されている数字を使って電卓を何度も叩いていけば、時間はかかりますが正解を導けるかもしれません。
しかし、その解き方だと試験の時間に間に合わなくなる可能性もあるので、テキストに書かれている内容を1つ1つ正確に理解していくのが一番の近道になるでしょう。
簿記2級では、工業簿記よりも商業簿記の方が難しいのに加え、商業簿記の方が配点も高いです。
工業簿記で満点が取れると商業簿記の問題を解く時に余裕が生まれますので、この記事でご紹介した内容を副材として、テキストの理解度も高めていってくださいね。
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