- 棚卸減耗損の計算がわからない・・・
- B/S に記載する商品の金額は?
- 決算整理後残高試算表に書く商品の金額は?
このような声にお応えして、自分が簿記2級の勉強をしていた時に苦労した「棚卸減耗損と商品評価損」と期末商品の関係など、わかりにくいポイントを詳しく解説します。
簿記2級から登場する棚卸減耗損と商品評価損ですが、簿記3級の難問であった売上原価に関連の論点です。
キノ
この記事を読んでいただければ、簿記2級で必要な売上原価と「棚卸減耗損と商品評価損」のイメージが強くなりますので、最後までご覧ください。
キノ
〜この記事でわかること〜
棚卸減耗損・商品評価損とは?
まずは「棚卸減耗損と商品評価損」とは何なのかを復習しておきましょう。
- 棚卸減耗損:帳簿上の商品と実際に数えた商品の差異(数量系)
- 商品評価損:購入時の原価と決算時の正味売却価額の差異(価格系)
また、「棚卸減耗損と商品評価損」を学ぶ上で絶対に覚えておかなければならないことがあります。
それが、下記の2つです。
- 帳簿棚卸高:帳簿で記録していた商品の『単価×個数』
(帳簿の記録上は、これだけ商品があるはずだ) - 実地棚卸高:実際にある商品の『単価×個数』
(実際に数えたらこらだけしか商品がなかった)
「棚卸減耗損と商品評価損」とは、帳簿で記録していた商品の『単価×個数』と、決算日に実際に数えた『単価×個数』の金額の差額(差異)のことです。
実地棚卸高で使用する『単価』は、正味売却価額を使用します。
正味売却価額は、将来商品が売れると予想される販売手数料を除いた金額のことです。
購入原価>正味売却価額の場合は、商品評価損が発生します。
購入原価<正味売却価額の場合は、商品評価損は発生しません。
(購入時よりも価値が高くなるのであれば、収益なので損ではないですよね)
簿記2級は、簿記3級と比較してかなり難しい試験です。
この記事を見て、
「簿記2級って難しい・・・」
って感じた方は、思い切って通信講座を利用するのもおすすめです!
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棚卸減耗損・商品評価損の計算方法は?
「棚卸減耗損と商品評価損」の計算は、何回も練習して手で覚えてしまうのも良いですが、しっかりと意味を理解すれば計算方法も忘れにくくなります。
キノ
棚卸減耗損の計算方法
棚卸減耗損は、商品の減少分を費用として計上することを目的としています。
なので、帳簿上「これだけ商品があるはずだ!」という個数と、実際に数えたら「これだけしか商品がなかった・・・」という、2つの差額が棚卸減耗損です。
上記の内容を踏まえて式を立てましょう!
(例)
- 仕入:@100×20個
- 期首繰越商品:0個
- 帳簿上期末在庫:5個
- 実地期末在庫:3個
<考え方>
実際の商品数と購入後から帳簿上の計算で残っているはずの商品の数の差額を計算するため、(実地数量ー帳簿数量)の順番で計算します。
上記の例題の場合
(実3ー帳5)
さらに購入時の単価@100を掛けます。
(実3ー帳5)×100
計算をすると、棚卸減耗損は200円と計算できます。
キノ
工業簿記の材料消費量差異、材料消費価格差異と同じ発想です!
(材料消費量差異は棚卸減耗損、材料消費価格差異は商品評価損です)
棚卸減耗損を計算する際に使用する単価は、購入時の単価を使用します。
「正味売却価額で計算しないの?」
と疑問に思われるかもしれません。
棚卸減耗損は、商品数量が減ったことで発生する費用の計算なので、実際に購入した際の単価を使用していくら分損をしたのかを計算します。
商品評価損の計算方法
商品評価損は、商品の価値の減少分を費用として計上することを目的としています。
なので、「将来的に〇〇円で売れるはずだ!」という単価と、「将来的に〇〇円でしか売れない・・・」という2つを比較して計算するのが商品評価損です。
上記の内容を踏まえて式を立てましょう!
(例)
- 仕入:@100×20個
- 期首繰越商品:0個
- 帳簿上期末在庫:5個
- 実地期末在庫:5個
- 正味売却価額:@90
<考え方>
商品評価損は、商品の価値の減少を費用として計算するので、(正味売却価額ー購入時の単価)の順番で計算します。
上記の例題の場合
(正90ー購100)
さらに実際に残っている商品の個数を掛けます。
(正90ー購100)×5個
計算をすると、商品評価損は50円と計算できます。
購入原価>正味売却価額の場合は、商品評価損が発生します。
購入原価<正味売却価額の場合は、商品評価損は発生しません。
購入原価<正味売却価額の時に、商品評価損が発生しない理由を少し考えてみてください。
・・・
理由は、
損が発生しないからです。
商品評価損は、商品の価値が下がってしまった時に計算するので、正味売却価額が購入時の単価より高い場合には計算不要です。
たまに、正味売却価額の方が高いのに計算してしまう方がいるみたいなので注意しましょう。
貸借対照表(BS)に書く商品の金額は?
「棚卸減耗損と商品評価損」が絡むと間違いやすいのが、B/Sの商品の金額です。
商品BOXを書くとイメージしやすいのですが、期末の在庫には「帳簿棚卸高」と「実地棚卸高」の2つの情報があります。
あなたは、B/S に記載する商品は、帳簿上と実地上どちらの金額を書けば良いかわかりますか?少し考えてみてください。
・・・
答えは、「実地棚卸高」の金額です。
「帳簿棚卸高」の商品の内訳は、「実地棚卸高」+「棚卸減耗損と商品評価損」です。
B/Sは資産・負債・純資産を計上する財務諸表なので、「費用が含まれている帳簿棚卸高」ではなく、「実地棚卸高」の金額で計上します。
決算整理後残高試算表(TB)に書く繰越商品の金額は?
決算整理後残高試算表(&精算表)に書く繰越商品の金額もB/Sの金額と同じです。
ここで少しややこしいのですが、「棚卸減耗損と商品評価損」には、「売上原価に含める方法」と「売上原価に含めない方法」の2つがあります。
- 売上原価に含める方法
- 売上原価に含めない方法
仕訳にすると下記の通りです。
- 仕入100/繰越商品100
- 繰越商品50/仕入50
- 棚卸減耗損30/繰越商品30
- 商品評価損20/繰越商品20
- 仕入30/棚卸減耗損30
- 仕入20/商品評価損20
※商品勘定に含まれている費用を売上原価と一緒に計上するという意味です。
- 仕入100/繰越商品100
- 繰越商品50/仕入50
- 棚卸減耗損30/繰越商品30
- 商品評価損20/繰越商品20
テキストでも記載されている内容ではありますが、この2つに関しては、
「売上原価に「棚卸減耗損と商品評価損」を含めるか含めないか?」
という話をしているので、B/Sや決算整理後残高試算表(&精算表)に計上する商品とは無関係です。
あくまでもB/Sや決算整理後残高試算表(&精算表)に計上する商品の金額は「実地棚卸高」を計上します。
損益計算書(PL)の売上原価の金額の求め方は?
「棚卸減耗損と商品評価損」には、先ほど「決算整理後残高試算表(TB)に書く商品の金額は?」の章でお話をした、「売上原価に含める方法」と「売上原価に含めない方法」の2つがあります。
試験では「独立科目として処理、売上原価の内訳項目として処理」などと書かれていることもあります。
- 売上原価に含める方法:売上原価の内訳項目として処理
- 売上原価に含めない方法:独立科目として処理
「売上原価に含める方法」と「売上原価に含めない方法」で、売上原価の金額が異なりますので注意してください。
- 仕入100/繰越商品100
- 繰越商品50/仕入50
- 棚卸減耗損30/繰越商品30
- 商品評価損20/繰越商品20
- 仕入30/棚卸減耗損30
- 仕入20/商品評価損20
- 仕入100/繰越商品100
- 繰越商品50/仕入50
- 棚卸減耗損30/繰越商品30
- 商品評価損20/繰越商品20
売上原価に含める方法が原則です。
キノ
売上原価はすでに販売した商品の原価という違いを意識すると覚えやすいです!
「棚卸減耗損と商品評価損商品」BOXの下書きの書き方を解説!
最後に、「棚卸減耗損と商品評価損」の計算を簡単にする商品BOXの下書きの書き方をご紹介します。
キノ
▼商品BOXの下書き
商品BOXの使い方
商品BOXの下書きを書いたら、決算整理事項の資料を読みながら必要な情報を埋めていきましょう。
キノ
以下の情報をもとに、決算整理後残高試算表の【売上原価、繰越商品、棚卸減耗損、商品評価損】の金額を求めなさい。
先入先出法を採用している。棚卸減耗損と商品評価損は、売上原価に含める。
- 期首商品:単価@50、残高10個
- 仕入:単価@60、仕入数量100個
- 当期販売数量100個
- 期末実地棚卸高8個
- 正味売却価額@50
- 売上原価:6,100
- 繰越商品:400
- 棚卸減耗損:120
- 商品評価損:80
<解説>
基本の形なので、下書きの位置などしっかりと覚えておきましょう。
資料の情報から、期首商品、仕入、期末商品(帳簿)の金額は埋められます。
今回の問題は先入先出法なので、期末商品は当期仕入分@60で計算します。
棚卸減耗損の計算をしましょう。
試験の総合問題では、金額が示されているかもしれません。
今回は練習なので、自分で計算するパターンの問題です。
棚卸減耗損は、数量系の費用なので、帳簿上の残りの数量と実際の数量を比較します。
(実8ー帳10)×@60=▲120
商品評価損の計算をしましょう。
商品評価損は、価格系の費用なので、購入時の単価と期末の正味売却価額を比較します。
(正50ー購60)×50個(実地数量)=▲80
「棚卸減耗損と商品評価損」を商品BOXに反映させましょう。
実地棚卸高は差額で計算しなくてもいきなり答えを出せます。
@50×8個=400
売上原価は、貸借差額で計算します。
また、今回の問題は「棚卸減耗損と商品評価損は、売上原価に含める。」と書かれていましたので、
仕訳を書きましょう。
- 仕入500/繰越商品500
- 繰越商品600/仕入600
- 棚卸減耗損120/繰越商品120
- 商品評価損80/繰越商品80
- 仕入120/棚卸減耗損120
- 仕入80/商品評価損80
商品BOXにすると下記のようになります。
キノ
売上原価(費用)棚卸減耗損(費用)商品評価損(費用)なので、全て足し算で5,900+120+80=6,100です!
このような考えができれば、仕訳書かなくても問題解けそうですね!
まとめ
この記事では、「棚卸減耗損と商品評価損」について解説をしました。
棚卸減耗損は数量系の費用で、商品評価損は価格系の費用です。
簿記2級の勉強をしていた頃、「棚卸減耗損と商品評価損」の計算はできるようになったのですが、
「B/Sに表示する商品の金額は何をかけばいいの?」
というのがわからずに苦労しました。
キノ
このあたりの論点は、簿記3級と比較してどんどん細かくなっていくので、しっかりと基礎を固める必要があります。
B/Sの商品は、実地棚卸高の金額を記載します。
帳簿上の商品には、「棚卸減耗損と商品評価損」と本来B/Sに記載するべき商品の金額が含まれています。
上記のことを理解すると、B/S に記載する商品の金額も忘れにくくなります。
簿記2級のテキストでは仕訳をメインに解説されていることが多い気がしますが、商品BOXの書き方を覚えると理解が深まります。
(もちろん仕訳も覚える必要があります。)
下書きの書き方を覚えると、試験の時も仕訳を書くよりも早く問題を解くことができますので、練習問題を通して使ってみてください。
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